それってどんなりんご?

 ファルマンと、ファルマンの友達だという好色な女と、3人で遊んだ。
 夢の話である。
 ファルマンの友達に、好色な女はいない。いや、いないかどうかは知らない。少なくとも、僕の夢に出てきたあの好色な女は、実在するファルマンの友達ではないということだ。
 なにをして遊んだかといえば、「それってどんなりんご?」をしていた。
 「それってどんなりんご?」とはなにかといえば、僕もついこの間、夢の中で好色な女といちどやっただけだから、そう詳しいわけではないのだけど、たとえば僕と好色な女、実際のところファルマンはゲームには参加せず横にいるだけであり、このゲームは基本的にふたりでの対戦となるわけだが、ふたりが順番に、「それってどんなりんご?」と相手に訊ねる。訊ねられた相手は、「蜜が詰まっているよ」だとか、「種があるよ」だとか、「皮を剝くよ」だとか、「赤くて丸いよ」だとか、りんごの特徴を答えていく。しかしそれはりんごの特徴であると同時に、性器の特徴でもあるのだ。というより、りんごでカムフラージュしつつ、実はずっと性器のことをいい続けていたのだ、僕と好色な女は。
 夢の中で行なったのはそこまでで、起きてから、対戦する競技ゲームという触れ込みのくせに、いったいあれのどこが競技なのか、ただのりんごにかこつけたエロトークではないかと思って、どういうことなのかと考え、マジカルバナナが、ゲームのルール説明の際に「バナナといったら滑る、滑るといったら氷」というふうにバナナを使うから、本物のゲームの中ではバナナがぜんぜん出てこないことのほうが多いのにゲーム名はあくまでマジカルバナナ、というのと一緒で、要するに夢の中の僕と好色な女は、永井美奈子が口で説明する「バナナといったら滑る……」を、僕に実際にやってみせてくれていたのだと思った。
 つまり、ゲーム名は「それってどんなりんご?」であり、それを決め台詞として互いに訊ね合うのだけど、本当にりんごが主題になるわけではない。それぞれが頭に思い浮かべた(あるいはあらかじめカードなどに記した)なんかしらの対象について、性器の特徴と絡めながら答えていく。そして相手はその答えから、なにについていっているのか当てる。これはそういうゲームなのだ。
 たとえばこうである。
A「それってどんなりんご?」
B「やわらかかったり、固かったりするよ」
A「…………?」
B「それってどんなりんご?」
A「中にいろいろなものが入れられるよ」
B「…………?」
A「それってどんなりんご?」
B「引っ張ると伸びるよ」
A「…………?」
B「それってどんなりんご?」
A「使ってるとだんだん黒ずんできちゃうよ」
B「…………?」
 というふうに、ゲームは展開する。ちなみにA(♀)のりんごは「ペンケース」、B(♂)のりんごは「餅」である。
 しかしプレイヤーが自分でりんごの正体を考えていいとなると、上記のそれがそうであるように、どうしても性器に対して寄ってしまうというか、共通項の多いものになってしまいがちだと思う。まだ僕はこのゲームをしたことはいちどもないけど、しまいがちだと思う。これを改善するためには、第三者に20個くらい、「カメラ」とか「湖」とか「チョコレート」とか「蜂」とか、性器のことは気にせず単語を挙げてもらい、それをカードにして、プレイヤーに1枚ずつ選ばせればいいのだと思う。そうして性器とはまったく関連性のなさそうなものから、これまでまるで気づいていなかった性器との共通項、すなわち性器性を探ることこそが、このゲームの醍醐味なのだと思う。そして思い至る。夢の中のファルマンは、この役割の人だったのだと。夢の中では本当にりんごをテーマにしていたから不要だったはずなのに、それでもファルマンはあの場にいた。それはつまり、このゲームには3人が必要だということを示唆していたのではないかと思った。
 そんなわけで、みなさんもぜひ、合コンとかで「それってどんなりんご?」をやってみてほしいと思います。それってなんだかとってもいいんじゃないかと思います。