クリちゃん


リスティアーノ・ロナウドが、先般の試合でゴールを決めたあとに行なった「股間パフォーマンス」のことでFIFAから処分されるかもしれない、というニュースを目にして色めき立った。なんてったって股間パフォーマンスという言葉がいい。一瞬で心を奪われた。
 それで事の経緯を確認してみたところ、チャンピオンズリーグ決勝トーナメントのユベントス対アトレチコ・マドリードの試合で、最初に後者のホームで試合をし(2-0でアトレチコ・マドリードが勝利)、そのときに後者のチームの監督であるシメオネが、まず股間パフォーマンスを行なったのである。そうなのだ。いきなりクリロナがやったわけではないのだ。はじめにやったのは相手チームの監督なのである。映像で見たら、左右の親指と人さし指で輪っかを作り、それで自分のちんこ部分を囲っていた。これの意図について、シメオネ本人が語ったのか誰かが勝手に解釈したのかは判然としないが、「選手の睾丸の大きさ=根性を強調していた」と説明されている。その屈辱的なファーストレグの後、次はユベントスのホームでセカンドレグが行なわれた。この試合でなんとユベントスは、クリロナのハットトリックによって3-0で勝利し、2試合の合計得点を3-2として、アトレチコ・マドリードを打ち破るのである。クリロナのパフォーマンスはこのときに出た。つまりシメオネに対する報復だったのである。
 だからどう考えてもクリロナはあまり悪くないのだが(と言うかハットトリックで逆転とかかっこよすぎるだろう)、そんなことは僕にとってどうでもいい。どちらのチームのファンでもないし、国内外問わずサッカーそのものに興味がない。
 とにかく股間パフォーマンスである。シメオネとクリロナ、両者の股間パフォーマンスを見ていて気になったのは、彼らの股間観の相違である。シメオネのそれが前述のとおり睾丸に主体を置いているのに対して、クリロナのそれは映像で見る限り(股間部までが正面からしっかり映された映像というのはなぜか見つからないのだが)、陰茎を表現している。シメオネは下腹部あたりでのガッツポーズからそのまま股間囲いをしているのだが、クリロナは頭上高くから腕を振り下ろして股間囲いをし、そしてその動きを2度ほど繰り返している。だからクリロナの腕の動きに合わせて、とても巨大に勃起した陰茎の姿がそこには浮かび上がる。クリロナは陰茎派なのだ。
 たしかに股間といえば陰茎だ、と思う。いいや違う、機能として本当に大事なのは精巣を有する睾丸であり、股間の本体は睾丸にこそある、というシメオネ派の主張はたしかにその通りなのだが、しかしそれで睾丸をアピールされたって、それはどうしたって訴求力として弱い。股間というのはそんな風に理屈で捉えられるものではない。どこまでも単純に、「デカいチンポ(陰茎)→テンションが上がる」という、ただそれだけのものだと思う。だから僕はクリロナの表現に賛同する。逆にシメオネはどうした、と思う。シメオネは父系がイタリア、母系がスペインの人物で、自身はアルゼンチン出身の48歳だという。48歳。ちょいワルおやじっぽい外見で、まだまだ老け込んでいない。それなのになぜ陰茎ではなく睾丸だったのか。守備的ミッドフィルダーだったという現役時代のプレイスタイルが影響しているのだろうか。たしかになんとなく陰茎→攻撃、睾丸→守備という感じはある。もっとも陰茎はたしかにそうだが、睾丸は特に守備をするわけではない。
 それにしたってクリロナの巨大すぎる勃起である。クリロナって顔が整っていて筋肉ムキムキで、とても作り物めいている存在だ。ファンだとか心酔しているというわけではなく、とてもフラットな気持ちで、だいぶ神に近い生き物だな、ということを思う。それゆえにきっとクリロナの勃起したチンポって、見てもなんの感動もないだろうとも思う。実際に目にする前から、クリロナの勃起は想像できる。そういう意味で言えば、あのゴールパフォーマンスのとき、我々はクリロナの勃起をもう見ていたのだと思う。そしてクリロナはそれの表面を指で激しく撫ぜていたのだ。
 そんなはずがあるか、いくらクリロナだからってあんなに大きなチンポであるものか、と思われるかもしれないが、チンポって物質界だけのものではなくて、イデア界のそれのサイズとの合計で算出されるものなので、そう考えればクリロナのチンポはたしかにあの大きさになる。ヒトはそもそも霊長類で最大のペニスを持つ生き物だが、クリロナはその中でも最高レベルと言っていい。もっともクリロナはもう80パーセントくらい霊長類の括りから抜け出している存在なので、追放するべきかもしれない。クリロナはイデア界のペニスチャンピオンズリーグにこそ出場するのがいい。
 FIFAがクリロナの処分をするというのなら、その罪状は下品なパフォーマンスで相手を挑発したことではなく、ピッチの上でマスターベーションをしたことだろう。それはいけない。クリちゃん、それはいけないよ。