しかしこのドラマの星航一というキャラクターによるものか、岡田将生という俳優の持ち味によるものか、この「なるほど」に、なんとなく色気がある。主人公の夫なので、基本的に夫婦間の会話の中で出てくるのも一因かもしれない。
星航一は、寅子とは再婚同士で、前妻との間に子どもがふたりいる設定である。でもそこにはだいぶ違和感がある。岡田将生の見た目がどうしたって若いから、というのもあるが、岡田将生という俳優は、どことなく童貞っぽい感じがあり、そこに原因がある気がする。実際はひどくモテるに違いなく、童貞であるはずはないのだが、そのあまりの清潔感ゆえか、岡田将生の脚の間には、陰毛の生えた男性器があるようにはとても思えず、それゆえに童貞性がある。この感覚は僕だけだろうか。僕がやけに岡田将生を神聖化しすぎているのだろうか(ちなみに「ゆとりですがなにか」では、岡田将生ではなく松坂桃李が童貞キャラだった。松坂桃李もたしかに童貞っぽさはあるが、むしろ岡田将生のほうが強いと思う)。
それでなにが言いたいかと言うと、僕は星航一、つまり岡田将生の「なるほど」を聞くたびに、岡田将生は童貞だから、寅子とぜんぜん別のことを話しているのに(ドラマは終盤に入って重たい社会問題のオンパレードである)、なにか頭の中でエロい曲解をしてしまって、それで「なるほど」と言っているのではないか、と思うのだ。そう思わせる「なるほど」なのだ。
だから、もしも岡田将生がこの先、童貞を喪失することがあったとして(生えていないのにどうやって行為をするのかという問題は別として)、挿入し、抽送し、やがて果てるとき、生まれて初めての快楽に心の中では感激しながらも、やはり長年培われてきた童貞性はそう簡単には捨てられず、なるべく平静を装ったような感じで、「なるほど」と言うのだろうと思う。それは、僕は決して利己的な快感のためだけに腰を振ったわけではなく、これは生命の根源的な神秘に触れんがための行為だったわけで、神はこの瞬間のわれわれに、こういう感覚を持たせてくれたのか、蒙が啓けたような思いだな、という「なるほど」である。とてつもなく童貞っぽい「なるほど」である。
でもこれは岡田将生にのみ許されたセリフではなくて、射精をするときに男はなんと言えばいいのか問題というのは長く存在し、これまでの僕の暫定的な答えは「食らえー!」だったわけだが、岡田将生の真似をして、われわれも「なるほど」と言えばいいのではないだろうか。動きや膣圧、なにより全体的な相性など、多角的に味わい、吟味した感じを出しての、「なるほど」。「ジョブチューン」で一流料理人がコンビニスイーツをジャッジする感じでの、「なるほど」。えっ、だとしたらそれはとても感じが悪くて、相手の女性に怒られるのではないかって? いいえ、怒られるかどうかはあなた次第。岡田将生は怒られない。要するにそういうことだ。なるほど。